構造の話をする上で重要なのが金物。
昔ながらの家を見学すると、”釘を一切使わずに建てています”と説明されることもありますが、材料と材料をつなぐ技術が相当高く、手間暇をかけて建てられた建物の場合です。
今の家は金物を使い、釘というよりもネジのついたビスで、ガッチガチに固定します。
耐震性を高めるためにも重要で、金物の取り付けは建築基準法でも定められており、N値計算をした上で、必要な部分に必要な耐力の金物を取り付けます。
今回は家を建てる時にどんな金物が使われるか、説明したいと思います。
羽子板、かんざしボルト
画像上側の金物です。梁と梁を直角に固定します。
名前の通り、羽子板のような形の金物と、羽子板に差し込むボルトです。かんざしボルトという名前が付いてはいますが、ごく一般的な真っ直ぐなボルトです。羽子板とセットで使うものをかんざしボルトと呼びます。
羽子板の柄にあたる部分を片方の梁に通し、羽子板の部分からかんざしボルトを入れ、もう片方の梁に固定。その後、先に通した梁側を固定します。梁の厚み(梁成・はりせいと言います)が大きいと、2セット使います。
※ウチの会社で使う羽子板はちょっと値段が高めの特殊なものです。普通のは羽子板の面にもナットが必要です。この羽子板にはネジの溝が切ってあるため、裏からボルトを締めれば羽子板は留まり、ひと手間省略できます。ナットを落とすリスクも減るため、作業効率が上がっています。
両引きボルト、片引きボルト
ごく一般的な真っ直ぐのボルトです。両引きは両方にネジの溝がついていて、片引きは片方だけ。片方は最初から留められています。
他にも場所によっては全ネジという、ボルト全部にネジの溝が付いているものを使ったりもします。
火打ち梁(斜めに留められた材)は片引きボルトで固定します。
両引きボルトはこんな場所で使います。梁・柱・梁や、梁に両側からかかる梁(下写真)を固定していますが…これはどうやってボルトを通しているでしょう…?
実はボルト穴の延長にも穴が空けてあって、ボルトを入れた状態で柱や梁を伏せ、その後四角く空けられた穴(箱穴)からボルトをスライドさせ、ナットをしめます。
これを差し戻しと言います。(この名称は全国共通ではないかもしれません。)
ホールダウン
基礎に埋め込まれたボルトで、基礎と柱を、また、柱と梁を固定する金物です。
縦に延びた長い金物です。短いものもありますが、写真の通り、筋違金物とガチ合うことが多く、長い方が安心なので、私は長いものをよく使います。
チェックを怠ると、筋違ともあたることがあります。
柱の金物
柱の上下に付ける金物です。柱と土台、柱と梁を留めます。
いろいろな種類があり、必要な耐力によって使い分けます。取り付けが必要ない柱もあるので、全部の柱についていなくても大丈夫です。
筋違金物
筋違の上下を留める金物です。
画像は柱と筋違を留めていますが、土台や梁も一緒に留められるものもあります。
プレートにたくさん穴が空いていますが、全ての穴にビスが入っていなくて、心配になる方もいるかと思います。この金物はビスの本数で筋違の強度が決まるので、必要な分だけビスが入っていればOKです。
かすがい
“子はかすがい”の、あのかすがいです。梁と小屋束、小屋束と母屋・棟木を留めます。大きなホチキスの芯のようなコの字型をしています。
垂木金物
垂木と軒桁(のきげた)を留める金物です。以前はプレートをひねったような金物(ひねり金物)で、ビスを使ってそれぞれを留めていましたが、今は長いビスで垂木と軒桁を留める写真のようなものが主流になりました。
金物のチェックポイント
…と言っても、素人がここに金物がいる、いらないを判断するのは難しいです。
できることといえば、
- 梁や柱に穴が空いているのに、金物が通っていない。
- ボルトは通っているが、ナットがない。
- 筋違とホールダウンが重なり、筋違が欠き(削り)取られていないか。
という、致命的なミスを見つけるくらいでしょう。あとは、金物が絶対必要な部分のチェック。
- 筋違の上下に金物が付いているか。
- 梁のクロスした部分に金物が付いているか。(小さい梁は除く。化粧材は付けなかったり、金物を隠したりします。)